かつてわたしのところに、友人達がさまざまなものを仮置きして、故郷へ、海外へさっさとでかけ
ていった。そのまますっかり忘れ去られたものたちの中の一つがこの石膏像。ギリシャ神話にでてくる、戦の神;マルス(Mars)。
たぶんヨーロッパのどこかに、長いローブをゆったり肘にかけて、剣と楯を持った立像があるはずで、そこから適当に型抜きした石膏像
が、こんな東の端っこの異郷にある。
工学と情報世界で研究を積み上げてきたびすけっとさんが突然通信制の美大に入学。せっせと
木炭デッサンをはじめた。
本人曰く「描ける、上手くなる理屈を知りたいんだ。でも、なにしろ木炭の柔軟な使いやすさが面白くて面白て!。」
と、新鮮な制作の喜びに満ちている。それがそのままこの第一作目にめいっぱい表れている。
これみて正直おもったのは、へんにアカデミックなことしないで、美大もさ、基本的な道具の扱いなど学んだら、とっとと止めちゃってこ
の路線でいったらどーよ?って本気で思った。
なのに、私も矛盾している。
油絵科って言えばコレでしょみたいな石膏像を貸し出しちゃった(笑)。
かつてわたしが学んだ渋谷美術研究所では、1980年代の半ば、当時の所長が全部の石膏像を屋上にあげて、階下
めがけて叩き割る!というイベントを敢行。
なにか意味のある宣言をしていたように思う
んだけど、詳細をさっぱり思い出せない。バカだわ、あたし。
コレの意味は、なんだったのか?
・受験生はとらないのよ、わたしら?
・もう、ギリシャ、ローマには倣わない?
・わかりやすいテーマからの脱却?自らの課題を求めよか?
いずれにしても、軍神マルスも無事に、
あっちの研究室に収まったみたいね。そっちの世界でもしっかり白白、活きて
おくれ。