杖道は、芸術そのものです。形(型)という情報をもった芸術です。
400年伝承されてきた古への形武道、杖道は、どこにでもありそうな一本の棒切れを使います。その一撃で真剣さえ叩き折る、あるいは相手の体勢ばかりでなく心まで崩すと云われます。その軌跡は、とても美しい。杖道は、すでに芸術そのものです。形(型)という情報をもった芸術です。
しかしこれ、観客として見たのじゃわからないのです。相手と対したその本人が、正確に杖(じょう)の操ることではじめて見えてくる世界です。
そこで、杖の両端にLEDを仕込んで、杖道の美しさの一端を可視化してみました。すると生身の身体から棒一本で拡張された空間が、起動します。変化する攻防の殻を持った生命体が見えてきます。
これは武道による美術か?、あるいは美術の発想で臨む武道か?
たぶん、そのどちらでもありません。私の関心はもっぱら「上手くなること」。一歩一歩稽古の積み重ねの中に見えてくる、上手くなる体験を記憶にとどめたい。体験を形象化したい。それは私 にとってアートとまったくイコールなのです。
2003年のある日、映画「スター・ウォーズ」に出てくる最長老ヨーダに似た杖道の先生方 から、ひょいと手渡された白樫の杖を握った瞬間、とても気持ちよかったことをいまでも鮮明に覚えています。
私は、これにすっかり心を奪われました。猛烈に上手くなりたい!と思うようになりました。
杖道は、命をかけた対話、身体を使った対話である。
あの宮本武蔵に勝利したと伝えられる夢想権之助(むそうごんのすけ)が創始した杖道は、優れた師範たちの身体をメディア(=媒体)にし て、無駄のない、命をやりとりする形情報を現代まで伝えています。
杖道形は、今に生きる人が再現するためのアルゴリズムのようなものです。これを繰り返し稽古して身体に馴染ませていきます。
杖道プラクティス@東経大
基本である「本手打ち」や「逆手打ち」から始めます。真っ向から相手をとらえて、本気がこもった空間の緊張を直に体感することは、非常に貴重 です。 こうして得た体感をもとにして、新たな表現へ、受講生とともに向かいます。
ウェアラブルカメラやLEDを仕込んだ光る杖などを使った、古への武道と最新の技術が相乗する、まさに、現在進行中のアートプロジェクトです。